アメリカか死か/23/01 Mothership Zeta

青い夜がおりてくる
青い夜がおりてくる
ほら、ここに、
ほら、あそこに、
トウモロコシの
ふさが震えている
(青い夜がおりてくる 『おれは歌だ おれはここを歩く』金関寿夫訳/福音館書店 より)


「あんた、大丈夫か? おい」
「Rita?」
 目の前には赤髪を坊主頭にした女性が立っていた。彼女は驚いたように身を一歩引いた。警戒しているという調子ではなく、むしろ親しげな様子だったが、彼女が誰なのか思い出せない。


 それもそのはずで、Somohと名乗った彼女とは初対面らしい。
「さっき言っていたRitaって、あんたの恋人? なんでそんな名前口走ったの? わたしに似ているのか?」
「いや、友だちです」
 容姿が似ているというわけではない。Ritaはもっと背が低かったし、肌は浅黒いというよりやや赤みがかっていて、髪は稲穂のような金色だった。ただ、ぶっきらぼうな口調だけが似ていた。


 周囲を見回す。ここは小さな部屋の中らしかったが、何処なのかさっぱりわからない。
 いや、それよりも気になることがひとつ。
 彼はゆっくりと首を巡らせたのち、己の両の手を見下ろした。
「おれは死んだはず……」
「死んだ? 成る程、あいつらの技術なら、死人を生き返らせるくらいのことはやるかもな。蘇り、おめでとう、なぁんて言えない状況ではあるがな。残念ながら」
「あいつら?」
「宇宙人だよ、宇宙人。あんた、わたしの頭がおかしいとか思ってくれるなよ。あいつらは研究用にわたしたちを捕えたんだよ。まったく、ふざけた話だ」


「宇宙人、か………」もう一度首を回し、独房の格子に近づく。さて、この身体は宇宙人の手術によって何か変わっているだろうか。確かめてみなければわからないところであるが。「とりあえず、出ようか」
「出れねぇぞ。変なエネルギーの場が見えるだろ。出ようとしても、弾かれる。まぁでも、わたしに考えがあってだな、いいか、よく聞け……」

 Somahの話を無視し、構える。
 変身。


 出入り口ではなく、壁を破壊し、穴を空ける。
「出られた」
 と言うと同時に、何やら外が騒がしくなり始めた。警報機くらいはついていたのかもしれない。
 扉が開き、如何にもな恰好の宇宙人が現れる。
「その姿は、もしかして……、あんたは………」
「Masked Raider」

 Lynnは眼前の敵に向かって構えた。


 いままで数々の敵と戦ってきた。Super Mutant、Behemoth、Centaur、Enclave、そしてVault 101からやってきた赤い肌の少女。最後の相手がいちばん手強かった。彼女には、一度も勝てなかった。


 あれに比べれば、目の前の相手など取るに足らない。銃の射線を見切ってレーザーを避け、接近、殴り倒す。


 この物語は風とともに現われ風とともに去る正義の戦士、Masked Raiderの物語である。

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