展覧会/『ラストクロニクル』/召喚英雄考察 -第6弾白橙紫


    • 《一休宗純》
    • 《木花咲耶姫》
    • 《イシス》
    • 《プラトン》
    • 《ジークフリート》
    • 《立花誾千代》





6-001R《一休宗純》
日本史(1394~1481)

そもそもいずれの時か夢のうちにあらざる、いずれの人か骸骨にあらざるべし。それを五色の皮につつみてもてあつかうほどこそ、男女の色もあれ。息たえ身の皮破れぬれば、その色もなし。
西村惠信, 『日本人のこころの言葉 一休』, 創元社, 2011. p28. 『一休骸骨』より


 臨済宗の僧侶。
 6歳のときに京都安国寺の象外和尚の門に入り、周建と名付けられる。若くしてさまざまな和尚のもとに弟子入りし、詩文などを学ぶ。
 読書を好み、病気がちではあったが、気性が荒く、毒舌家なところがあった。また師のひとり、祥瑞寺の華叟宗曇からは「風狂」(変わり者)と呼ばれるほどの変わった人間であった。

 《一休宗純》は語録(説法の記録)を作らなかったため、彼に関する資料は『狂雲集』『自戒集』(どちらも漢詩集)と『一休和尚年譜』(弟子による伝記)のみである。
 彼の頓知話は江戸時代になって噺本として作られたものである。初出は寛文8年(1668年)といわれているが、製作者は不明である。のちに明治・大正期には講談としても広まった。


あなたの時代が発展したとき、あなたのデッキから【カテゴリ(聖獣)】のユニットカードを1枚サーチし、手札に加える。
 将軍足利義満の時代の逸話に、こんなものがある。

 武家屋敷に連れていかれ、広間の衝立に描かれてある虎を捕まえてみよ、と言われる。
 《一休宗純》は縄を借り、虎を捕まえる準備を整え、「それでは誰か、あの虎を追い出してください」と頓知で返したという。

 なおこの話には続きがあり、褒美に餅を2つ渡された《一休宗純》は「どちらの餅が美味いか?」と問われ、両手を叩いて「どちらの手が良い音がしましたか?」と返した。


このユニットは効果に選ばれない。
 《一休宗純》は、後小松天皇を父に持つ天皇家の家系の皇子であった。
 ただし藤原氏の出身の母が、《一休宗純》が産まれる前に政治抗争に巻き込まれ、讒言によって庶民に身を落とされていたため、本人は裕福な暮らしとは無縁であった。

 というよりも、自分のように政治抗争に巻き込まれないように、という《一休宗純》の母の願いゆえに豪奢な生活とは縁遠くされたのかもしれない。。
 母の手回しの甲斐あり、《一休宗純》は政治的な争いを避けることができた。
 彼は己の複雑な立場に悩み、入水自殺を試みることもあったが、最期には今際の際に「死にたくない」と生者らしい言葉を吐くまでに天寿を全うした。 
 文明十三年、没。享年88歳。




6-005S《木花咲耶姫》
日本神話

 レイラニが左脚を踏みおろすと、脚の装具が低い金属音を立てた。左手をあげて見せる。その手もまた変形していた。小指と薬指が不格好にくっついて、分厚い網目状の組織で、ねじくれた短い中指に癒着している。
 ミッキーは、いままでその変形に気がつかなかった。「だれにも欠点はあるわ」
「これは、鼻が大きいとかいうのとはわけがちがう。あたしは、ミュータントであるか不具であるか、どっちかなの。そして、あたしは不具であることを拒否する。人は不具者を哀れむけど、ミュータントのことは恐れるのよ」
D. クーンツ 著, 田中一江 訳, 『対決の刻』上, 講談社, 2008. p18より

 山の神である大山祇神の娘。桜を象徴し、見目麗しい容姿をしている。
 火の神や酒造の神、安産の神であるとともに山の神であり、富士山の神霊である。
 姉に石長姫(イワナガヒメ)がいる。


対戦相手のユニットはワイプ状態で戦場に配置される。
[1][白][W]、このユニットを犠牲にする:対戦相手のすべてのユニットをワイプする。このアビリティはあなたのターンにのみ使用できる。
[CB]対戦相手のすべてのSSをワイプする。
 あるとき、高天原からやってきた邇邇芸(ニニギ)神が《木花咲耶姫》を見初め、父親の大山祇に結婚を申し入れる。
 気分を良くした大山祇は、「花の如く栄え、石の如く変わらぬ命」という意味を込めて、姉妹をふたりを嫁がせる。しかし妹とは違い、醜悪な容姿であった石長姫を邇邇芸は追い返した。

 その結果として、「石の如く変わらぬ命」を失った邇邇芸神と《木花咲耶姫》の子は花の如き儚き命となった。

 日本神話では天皇は神の子孫であり、《木花咲耶姫》の3人の子のひとりである山幸彦は初代天皇である神武天皇の祖父にあたる。
 人間と神々の関係は明確ではないが、《木花咲耶姫》をめぐるこのエピソードの結果、人間は神々と比べ、儚い花のような寿命になってしまったと伝えられる。

 《木花咲耶姫》が居なければ、このような悲劇は起こらなかっただろう。
 《木花咲耶姫》はただ儚く、ただ美しい花のような存在ではあるが、その美しさが圧力となり、彼女の目の前では、誰も彼もが膝をつかざるをえないのだ。




6-026S《イシス》
エジプト神話

 第二は、近代的感覚や発想で古代を考えてはいけないということです。ことにわれわれ日本人には、明治以来、ヨーロッパ的論理や方法論がしみ込んでいます。それは分析を好み、論理の矛盾を嫌う点です。それでは古代史、特に宗教的問題を理解することは困難です。また自然界を、人間と対立するものであるとか、異質のものであるとかする考え方は、古代社会には通用しません。
三笠宮崇仁, 『古代エジプトの神々―その誕生と発展』, 日本放送出版協会, 1988. iiiより.

 大地のゲブと天空のヌトの間に最初に産まれた4人の子のひとり。兄であるオシリスの妻であり、魔術や医術に優れ、聡明であったといわれる。
 《イシス》はギリシャ語での表記であり、古代エジプト語での近似音はアセトであると推測されている(書き文字であるヒエログリフには母音を表現する文字が無いため、子音のみしか記録されていない)。
 ギリシャ人に伝わった際にはデメテルやヘラ、セレネといった女神に関連付けられる。


あなたのデッキの上からカードを1枚ソウルヤードに配置する。
 《イシス》の2つのアビリティは、《イシス》と同じくゲブとヌトの間に産まれたきょうだいの諍いに関連づけられている。

 《イシス》のきょうだいは、兄であり夫であるオシリスのほかに、セトとその妻であり妹のネフティスがいた。
 セトは天空のヌトの子宮の中で、自分自身を引き千切りながら産まれたと主張する、暴力と混沌の塊のような神であった。
 兄であるオシリスを憎んでいたセトは、彼を謀殺して棺に入れ、ナイル川に流す。
 棺はシリア地中海沿岸にある貿易港、ビブロスに流れ着き、そこで植物の幹の中に閉じ込められる。
 だがビブロスの王はその植物の幹が大変美しかったので、その幹を切り、宮殿の柱にした。


あなたのソウルヤードにあるあなたの時代の数以下のコストのユニットカードを1枚選ぶ。それを戦場に配置する。
 一方、オシリスの失踪を悲しんだ《イシス》は悲哀に暮れながらもオシリスを捜索。彼がビブロスで柱の一部になっていることを知った《イシス》は、ビブロス王に嘆願し、柱を譲り受けエジプトへと持ち帰った。
 その後、兄を憎むセトによって棺の中の死体は奪い取られ、遺体は寸断されてエジプト中にばらまかれた。
 しかし《イシス》は必死に夫の遺体を拾い集め、魔術によって蘇生をさせ、オシリスを生き返らせることに成功した。こうしてオシリスは一度死を体験し、冥府の神になったのである。

 ちなみに性器だけはナイル川の魚に食べられてしまったため、ついぞ見つからなかったという。




6-038R《プラトン》
ギリシャ史/哲学史(-427~-347?)

 ギリシャ、アテナイの名家アリストンとペリクィオネの間に、芸術神アポロンの託宣を受けて産まれる。当時の名はアリストクレス。
 少年期、アルゴス出身のレスラーに師事し、読み書きと共にレスリングを学ぶ。
 彼は天性のレスラーであり、晩年の著作で、「レスリングを疎かにしてはいけない」と語るほどに少年期はレスリングに心酔した。
 師のもとで才能を伸ばされ、立派なレスラーに成長しつつあったアリストクレスは、歳を経るとともに体格も成長し、人並み外れて立派な肩幅だったため、《プラトン》(肩幅が広い、の意)と呼ばれるようになった。

 《プラトン》、20歳。ここで彼はとある哲学者に出会う。
 42歳年上の老人の名は、ソクラテスといった。
 ソクラテスに感銘を受けた《プラトン》は、それまで執筆していた己の文章をすべて廃棄し、ソクラテスに師事。
 8年後にソクラテスが死刑に処されてからも、『ソクラテスの弁明』、『ゴルギアス』、『クリトン』など、著作の中でソクラテスの対話を振り返り、彼の背中を追い続けた。


このユニットが戦場に配置されたとき、あなたのデッキの上から5枚を公開し、その中から『 異能 』を持つユニットカードを1枚手札に加える。残りのカードをデッキに戻す。その後、あなたのデッキをシャッフルする。
 ソクラテスとの別離以後、《プラトン》は政治と哲学の連携を目指し、各地に飛んで哲学を説いて回った。その中でディオンという愛弟子を得ることもあれば、有力者に嫌われて奴隷として売られることもあった。
 そんな艱難辛苦を乗り越えて、プラトンは晩年に哲学を学ぶ学園、アカデメイアを設立。論理的思考を第一とし、後進を育てた。


あなたのユニットカードの異能コストは好きな勢力のソウルで支払うことができる。
 イデアという概念を語るとき、しばしば色の認識が引き合いに出される。
 たとえば、という色がある。という色は、い色だ。この「」という字の色がを示す色なのだということは、(色盲でなければ)わかる。
 ではというのはどんな色だろうか?

 それを言葉で説明するのは不可能であり、他人との伝達は不可能だ。
 赤いものは赤いイデアを持っており、人間はその一面を見ているに過ぎない。だから他人と感じる赤が違うかもしれない
 だが誰がなんと言おうと、という色はある。というイデアが。真の姿が。

 それなればこそ、《プラトン》に目に見える色は関係ない。真実の世界、それそのものの色――イデアがあるのだから。




6-054S《ジークフリート》
北欧神話/戯曲

 ロキは言いました。「注意してお聴き!その指輪と黄金は全部、小人のアンドヴァリが作ったものだ。ぼくはただ、呪いを受けながらもぎ取ってきただけなんだ」ロキは一息ついて続けました。「だから、小人が言ったことを、ぼくが教えてやろう。彼が言ったことは、そのまま実現するだろうからな」ロキの声は低く、抵抗しがたいものでした。「その指輪を持っていけ! その指輪と黄金には、わたしの呪いがかかっているぞ! そいつはそれを所有する者を、誰でも滅ぼすだろうよ」
K・クロスリィ-ホランド 著, 山室静 訳, 米原まり子 訳, 『北欧神話物語』, 青土社, 1991. 二十六 オッタルの賠償金, p227より

 北欧神話の一端、『ニーベルンゲンの歌』に登場する英雄。父、ジークムント、母、ジークリンデのもとに産まれたニーダーラントの王子。
 ブルグントの姫、クリームヒルトと恋に落ち、彼女と結婚するためにブルグントで戦争に参加し、多くの功績を上げる。
 

『 突破 2 』
『 勇猛 』
 《ジークフリート》たちの時代、古代の黄金財宝を受け継ぐ小人をニーベルンゲン族と呼んでおり、とある旅の最中にあった《ジークフリート》は、あるときその財宝を分配する役目を授けられた。
 だが彼はニーベルンゲン族を完全に満足させられなかったため、報酬として受け取った宝剣バルムング/グラムを持って彼らと戦争をし、最終的にはその財宝を奪い取った。

 宝剣バルムングを手にした《ジークフリート》は龍退治など、様々な英雄譚を打ち立てる。
 この竜退治の際、竜の血を浴びたため、《ジークフリート》の肌は固くなり、どんな武器でも傷つけることができなくなった。
 ただし血を浴びたとき、背中(「両肩の間」)には広い菩提樹の葉がついたままだったので、そこだけが弱点となってしまった。


メインフェイズ1の開始時に、対戦相手は[2]支払ってもよい。そうしなかったならば、ターンの終わりまでこのユニットは破壊されない。
[CB]ユニットを1体選ぶ。ターンの終わりまでそれは破壊されない。
 クリームヒルトと婚姻した《ジークフリード》だったが、彼は妻の父、グンターの妻となった《ブリュンヒルデ》に恨まれていた。

 《ブリュンヒルデ》によって唆されたグンターとその部下、ハーゲンは無敵の《ジークフリート》を殺すために、クリームヒルトから弱点の部位を聞き出す。
 「《ジークフリート》の弱点を護りやすくなるように」と重臣ハーゲンに騙されたクリームヒルトは、愛する夫の弱点の部分がわかりやすくなるよう、衣服の背中の部分に十字の印をつける。

 そうして弱点を露出した《ジークフリート》は、泉の水を飲んでいるときに暗殺された。無敵の勇士の、あっけない最期だった。




6-057R《立花誾千代》
日本史(1569~1602)

 九州の大友宗麟は名門の出であったが、尊大な気があったといわれ、部下の妻を強奪するなどの横暴の結果、人望の無い人間であった。
 しかし彼の部下にはふたりの人材があった。岩屋城主、高橋紹運と立花城主、立花道雪である。

《立花誾千代》は九州の勇、雷神立花道雪の娘であり、知勇心を兼ね備えた名将、高橋紹運の子である立花宗茂の妻である。
 光照院が通称だが、宮永殿とも呼ばれることもある。これは夫である立花宗茂が柳川城に入城したのち、城下の宮永村に別居していたためである。この別居の原因に関しては不明であるが、宗茂が《立花誾千代》を含む3人の正室がいたにも関わらず、実子がひとりとしていないことから、そのあたりのことが関係しているのではないかとも想像できる。

 「誾」の字は慎み深いという意味を表すが、そうした名前に込められた願いとは程遠い性格だったと伝えられる。


『 速攻 』
このユニットが防御するか防御されたとき、対戦相手の攻撃ユニットを1体か対戦相手の防御ユニットを1体選ぶ。それに2000ダメージを与える。
[紫][W]:このユニットを手札に戻す。
 立花道雪が若い頃、木の下で雨宿りをしているときに落雷に撃たれた。
 しかしこのとき、道雪は咄嗟に刀を抜き、稲妻を切りつけた。

 落雷に撃たれた結果として、彼は足が付随になったものの、同時に「雷神を切った」という伝説が産まれた。
 足が不自由ながらも、彼は輿に乗り、「雷切」と名付けた刀で戦場を渡り歩いたという。


『 勇猛 』
このユニットは可能ならば攻撃しなければならない。
 立花道雪は足が不自由ながら優秀な武将であったが、ひとつ問題があった。彼は六十を過ぎても、ひとり娘の《立花誾千代》以外に子がいなかった。跡継ぎ問題である。
 そこで六十七歳の道雪は、高橋紹運に再三頭を下げ、十四歳の婿を取る。

 四年後、道雪は毛利郡との戦闘で病没。
 雷神、立花道雪死去の隙を突き、島津軍5万が立花領に迫る。
 対する岩屋城に籠る高橋紹運の手勢はわずかに700。

 しかし高橋紹運は島津による再三の降伏勧告も、息子による退避勧告さえもを跳ね除け、息子と義娘の居る立花城を護るために奮戦。50倍を超える軍勢を前に14日間、全滅するまで戦い続け、3000の島津兵を殺害、1500の負傷者を出した。
 彼の奮戦の結果、中央の豊臣秀吉が九州に到着し、立花は生き延びることができた。

 雷神、立花道雪。
 勇将、高橋紹運。
 《立花誾千代》はふたりの父の要素を引き継ぎ、勇猛なる雷と化す。

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■引用・参考文献
石川栄作, 『ニーベルンゲンの歌』 前編・後編, 筑摩書房, 2011
一龍斎 貞花, 『戦国武将生死を賭けた烈語』, 中経出版, 2009.
今泉淑夫,『一休とは何か』, 吉川弘文館, 2007.
K・クロスリィ-ホランド 著, 山室静 訳, 米原まり子 訳, 『北欧神話物語』, 青土社, 1991.
D. クーンツ 著, 田中一江 訳, 『対決の刻』上, 講談社, 2008.
左近司祥子, 小島和男, 『面白いほどよくわかるギリシャ哲学―ソクラテス、プラトン、アリストテレス…現代に生き続ける古典哲学入門』, 日本文芸社, 2008.
戸部民夫, 『八百万の神々―日本の神霊たちのプロフィール 』, 新紀元社, 1997.
中野等,『立花宗茂』, 吉川弘文館, 2000.
西村惠信, 『日本人のこころの言葉 一休』, 創元社, 2011.
G. Hart 著, 阿野令子 訳,『エジプトの神話』, 丸善, 1994.
三笠宮崇仁, 『古代エジプトの神々―その誕生と発展』, 日本放送出版協会, 1988.
山本節, 『神話の森―イザナキ・イザナミから羽衣の天女まで』, 大修館書店, 1989.

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