天国の前に/06/67日目 臥龍、一休沢庵と出会うこと

1245年5月28日
67日目
臥龍、一休沢庵と出会うこと

名 黒川十兵衛
性 大柄な男
力量 15
属性
体力21, 敏捷12, 知性8, 魅力6
技能
【体力】 鋼の肉体1, 強打3, 強投1, 弓術7
【敏捷】 武器熟練2, 盾防御0, アスレチック1, 乗馬4, 馬上弓術4, 略奪3
【知性】 訓練0, 追跡術0, 戦略0, 経路探索1, 観測術0, 荷物管理1, 治療0, 手術0, 応急手当0, 技術者0
【魅力】 仏門4, 芸能1, 統率力3, 取引0
熟練度
弓173, 長柄武器145, 片手武器81
具足 傷んだ星兜, 錆びた大立拳臑当, 重厚な小手, 粗雑な脛臑当
武装 十文字槍, 鍛え抜かれた神楽, 重藤弓, 大袋入りの腹繰矢
馬 気性の荒い鹿毛馬
仲間 文左衛門, 柳生宗厳
敗北数 1

 里見家の戦は順調であるといえた。
 北条家の葛西城は700以上の兵によって攻められた。


葛西城攻城戦里見家(768名) 対 北条家(196名)
勝利

 数だ。圧倒的な数の勝利だ。
 数の中での戦いというものを学んだ黒川十兵衛は、大量の兵士に囲まれながらも、その弓の腕前を披露できるようになっていた。5人、10人の頭を射抜くことさえある。


 だが、その程度、戦という波の中では大した影響を生じさせない。

 手柄は立てられる。だがそれは価値のあるものではないのだ。

 里見家はそのまま近くを行軍中だった北条家、松田盛秀の隊を攻めた。

野戦
里見家(236名) 対 北条家(132名)
勝利

 勝った。ああ、確かに勝った。数が多いのだから当然だ。


 敵の補給線を立つために、隊商を襲う。

野戦
里見家(159名) 対 北条家(38名)
勝利

 所詮は隊商兵である。数も50に満たない。勝てる。


 数だ。数さえ揃えば戦は勝てる。十兵衛はそれを理解した。
 だがそれは、己さえもその数という無個性な人間のひとりでしか無いと、忍びの技などなんの意味もないのだと、それを認めざるを得ないことであった。

 忍び。
 公に、それは隠密のことを指すと思われている。影に生きるものだと。
 だが実際には違う。
 忍びとは、耐え忍ぶ者ということだ。人間では不可能な境遇での修練を耐え忍び、個人の力を絶対的な領域にまで高めた者のことなのだ。隠密行為は、その高めた力を生かせるのが単独行動だからに過ぎない。

 だがそれさえも、無駄だったのではないか。無駄な修練だったのではないか。
「おやおや、険しい顔をされていらっしゃいますな」
 先月まで戦っていた千葉家の領地である小金城の旅籠で、ひとり酒をあおっていたおり、横からそんな声がかけられた。見れば、盃を傾ける僧形の若い男が座っていた。


「般若湯でございますよ」
 と僧形の男は盃を持ち上げて言う。そんなことは聞いていない。
「誰だ」
「愚僧は一休沢庵」若さに見合わぬ老獪さを醸し出しながら、沢庵と名乗った僧はにやりと笑った。「これでも由緒正しい、一休宗純の孫ですよ」
「血縁で徳が決まるものか」
「さて、そういう部分もあり、そういう部分もなし、といったところでしょうか。少なくとも徳がありそうに聞こえるでしょう?」
「何用だ」
「いえいえ、ですからね、あなたが険しい顔をされていたのが気になったわけで……」
「知らん。切るぞ」
「あなた、死にますな。死相が出ている」
「人は誰でも死ぬ」
 吐き捨てるように言って、十兵衛は酒に視線を落とす。
「そろそろ国に帰ったらいかがですか?」
「五月蠅い」
 去ね、と十兵衛は刀の柄に手をかけて、まさしく切り捨てようとした。
 しかし一休沢庵を名乗る僧は、既に消えていた。

 その翌日のことである。
 十兵衛の隊は北条家の江戸城を目指した。北条家がほかの国と戦争をしているとはいえ、江戸城は大城。そうそう容易に落とせるものではない。しかし目指さずにはいられなかったのだ。敵を求めて。

 江戸城の傍で、行軍中の軍隊を見つけた。旗印は、里見家。
「お味方か!」
 と駆けてきた馬隊の将は、里見家の真里谷信隆であった。兵数は、およそ120。

「黒川どの、兵数はいかほど?」と真里谷信隆は堰切った様子で尋ねてくる。
「50」
「たった50……?」
「さよう。先日の戦が響いている。何か問題が?」
「不味いぞ、挟まれておる。われらは南から、北条氏尭兵200に襲われた。遠見の兵の報告によれば、北からは北条綱重兵120太田康資兵180が迫ってきておる」


「成る程。200に満たぬ兵で500と戦わないといけぬわけですな?」
「黒川どの……、何を笑っておられる! われらの危機だぞ!」
 真里谷信隆に言われ、十兵衛は己の顔に手を当てた。成る程、確かに笑っている。
「これよ」
「なんだと……?」

 怪訝な表情の真里谷信隆と十兵衛の間に、遠方から大声が響く。
「里見の黒川十兵衛とお見受けいたす!」と駆けてきた騎馬隊の武者が叫ぶ。「それがしは北条家の太田康資! そなたが直江景綱公を打ち破ったと聞いて以来、矢を射交わすことを心待ちにしておったが……、どうやらわれらに分があるようですな。降伏めされよ」


「何を馬鹿な!」
 十兵衛は弓に矢をつがえた。
 降伏だと? 馬鹿な。馬鹿な。
「これよ、これよ! 武士とは、まさしくこれ!

 十兵衛は隊に号令をかける。弓隊には列を組ませ、歩兵に騎馬兵を止めさせる。
 そして止まった馬の周辺で爆発が起こり、土煙が巻き上がる。
 十兵衛の隊の炮烙、すなわち爆弾である。


 炮烙の音と煙に馬が嘶き、足が止まる。そこに矢の雨が降る。
「真里谷どの! もう逃げも隠れもできませんぞ!」と矢を浴びせかけながら、十兵衛は叫ぶ。「こうなれば生きるも死ぬも武士の誉れよ!」


 一度止まった北条家の騎馬隊であったが、敵の数は圧倒的である。あとからあとから騎馬がやってくる。十兵衛は炮烙で止まらなかった騎馬へと矢を放つ。
「十兵衛! 矢と炮烙が切れたぞ!」
 と文左衛門の叫びが響き渡る。
「それは好都合、わしもよ!」
 十兵衛は応えて、十文字槍を振る。そして北条家の兵の只中へと突っ込んでいった。


野戦
里見家(160名) 対 北条家(513名)
敗北(敗北数2


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