かくもあらねば/19/03



 もんどりうって倒れたCurtis大尉に駆け寄り、彼の9mm Pistolを蹴り飛ばす
 Curtis大尉は痛みに呻きながらも、身体を起こそうとしていた。弾丸が貫通したのは肩だ。今度ばかりは血に頭が昇って殺してしまうようなへまは仕出かさない。攻撃能力を奪い、その上で殺さぬように手加減ができた。
 大尉の胸の上に載り、頭を掴む。
「おい、何処に爆弾を仕掛けた」
口を割らないなら、無理矢理にでも割らせてやる、とそう続ける前にCurtis大尉は行動に出ていた。口を大きく開き、閉じる。その動作の後に、彼は咳き込み始めた。

「毒……?」
 Sumikaが呟く。
「糞っ、こいつ………」
 歯噛みするSiの前で、Curtis大尉は血を吐きながらも薄笑いを浮かべた。「糞っ垂れのNCRめ」

 毒を吐かせようとしても無駄だった。Curtis大尉は絶命した。
「糞っ………」
Siは彼の身体から離れる。爆弾が仕掛けられたことは間違いない。列車の出発と同時に爆発させる予定と言っていたか。おそらく時限爆弾だろう。まだ未明、列車の出発までには余裕がある。
(列車の中か、線路の上かはわからないが、ホームの周りで間違いないはずだ)
 McCaran駐屯地で仕事をしているCurtis大尉が駐屯地からそう離れて行動できたはずがない。探せば、見つかるはず。
(だが、見つかったとしてどうする?)
 爆弾解体はRangerの教習所で体験した。だがそれはあくまで教練で、本物を扱ったことは一度としてない。自分に、できるのか。

少尉……、力を貸してくれ)
 Siは幼い頃に世話になった男、南部NCRの少尉から譲り受けた銃、Luckyを握り締めて祈った。

 Siがここまで生きてこられたのは、Sumikaの存在やRangerとしての教練もあったが、それ以上に少尉の教えがあったからだ。彼の教えは様々な局面で役立った。
 ふと、彼の教えのひとつを思い出す。
「Si、Caesar's Legionは超人ではないし、逆に何も考えずに突っ込んでくるだけの猪でもない。NCRと同じ、ほかの人間と同じだ。だから相手の考えを読みたければ、自分だったらどう考えるか、ということを考えてみるべきだ」

 絶命したCurtis大尉を振り返る。
 彼は通信を行っていた。通信をしていたのは、NCRのパトロール区域の情報もあったからだろうが、列車に仕掛けた爆弾に関する報告もしたかったからだ。このCurtisという男は、慎重な性格なのだ。ならば急なアクシデントに備え、設置した爆弾を解除する方法も備えてあるはずだ。
 Siは彼の懐を探り、ホロテープを発見する。
「Si、これ……」
 Sumikaの声に、Siは頷いてやる。おそらくは爆弾の爆破と解除に必要なコードだ。

 あとは爆弾を見つけ出すだけだ。SiたちはMcCaran基地のホームへ向けて走った。
「どうやって探すつもりだ」とBoone。
「総当りしかない」
 Siは言葉を返しながら、Rangerの教練で習ったことを思い返す。爆弾の設置場所には一定の規則場所があるはずだ。そして少尉の言葉をもう一度思い返す。敵はこちらの行動を予想して、爆弾を仕掛けるはずだ。

 ホームに到着する。まだ辺りは暗い。発射までは余裕がある。
 SiはRexにホロテープの匂いを嗅がせる。
「Rex! 爆弾だ、わかるか!?」
 匂いを嗅ぎ終えたRexは、列車へと突っ込んでいく。Siが列車の扉を開けてやると、中に入って通気口の臭いを嗅ぎ、ひと吼えした。
 Sumikaが通気口の傍に降り立ち、中を覗き込む。
「Si、この中に、何か光ってるものが見える……!」


「まさか、Curtisが……。彼はLegionとの戦いが始まる以前からNCRに所属していた古参の隊員だっていうのに……」
 Siから事の顛末を聞かされたHsu大尉はそんなふうに呟いた。
 信頼する部下に裏切られて意気消沈する彼を気の毒に思いながらも、Sumikaは安堵に胸を撫で下ろしていた。

 爆弾の解除は成功した。SiがCurtis大尉から解除コードを得ていたために、爆弾をせずに済んだ。もし解体に挑戦していたら、失敗していたかもしれない。
きみの調査が間違いであってほしいが……、そうではないんだろう。調査内容については報告書の形式で提出してくれ。こちらでも改めて、何があったのかを調査する。あと、これは個人的な報酬だ」

Get: 250 Caps
NCR: Fame Gained!

 ひと仕事終えてMcCaran駐屯地のテントで休んでいたとき、Siへの尋ね人があった。
Ranger Fairy Eyeがここにおられると聞いたのですが……」
 伝令兵はそう言って、Siの元へとやってきた。彼が携えてきたのは一通の書状だった。

「誰から?」と伝令兵が去った後にSumikaは尋ねた。Booneは別のテントなので、話すのにも気楽だ。
あのおっさんから」
どのおっさん?
 Sumikaが書状を覗き込むと、差出人はStrip、NCR大使館のCrocker大使からだった。
 さらに内容を見ると、New Vegasの大事に関わる任務有り、早急に大使館まで来られたし、というものだった。

「New Vegasの大事って?」
「さぁ。書いてないな。勿体ぶってるんだろう」
「なんか、危なそうだね………」
「まぁ、そんな感じはするな」
 と言ってSiは書状を引き裂いた。任務を受けないわけではなく、単に機密を洩らさぬためだ。

 こういうところにいるとさ、と明け方、McCaran駐屯地を出るときにSiが呟いた。
「え?」
「こういうところにいると、なんとなくさ、南部NCRの駐屯地を思い出すな
 Siがそんなふうに言うのは、テントの並ぶMcCaran駐屯地が、設営の整っていない南部NCRの駐屯地に似ていたからだろう。
「懐かしいね」とSumikaは言った。「少尉とか、ドクターとか……、いろんな人がいたね」

 Siは腿、腰、背中にそれぞれ少尉から譲り受けたLucky、Johnnyの残していったMysterious Magnum、そしてRangerの証であるHunting Revolver+の入ったホルスターをつける。Cosmic Knife Cleanを腰に差し、Throwing Knifeを腕に仕込む。
「さて、行くか」
 そう言って、Siはテントを出た。

 Sumikaは肩に乗り、懐かしい人をに思いを馳せていた。
(少尉……、あなたは今頃、どうしているんですか……?)




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